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機種選びのポイント
直火式エスプレッソメーカーを選ぶ際、基準になる点はいくつかあるかと思いますが、ここでは、「材質」と「サイズ」という2つの大きな要素についてまとめてみました。機種選びの参考にしていただければ幸いです。
【
材質を選ぶ】
●アルミ、ステンレスとは
●価格
●味
●衛生面とお手入れ
●IH調理器について
●まとめ
【
サイズを選ぶ】
●直火式エスプレッソの1カップとは
●大は小を兼ねるか!?
●「減量フィルター」の利点
●人気が高いサイズは?
●まとめ
【
機種を選ぶ】
【
材質を選ぶ】
直火式エスプレッソメーカーには、主に「アルミ製」と「ステンレス製」の2種類があります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
~アルミ、ステンレスとは~
直火式エスプレッソメーカーの場合、「アルミ」というのは、一般的にアルミ合金の鋳物(溶かしたアルミ合金を鋳型に流し込んで作る物)のことを指します。量産しやすく価格も安いのが特徴で、直火式エスプレッソメーカーの材料として古くから用いられてきました。直火式の先駆け的存在でもある「モカ・エクスプレス」などがこのアルミ製です。
一方「ステンレス」は、耐食性・耐久性に優れた金属で、汚れやさびに強いのが最大の特徴です。原料価格や製造にかかるコストはアルミより高価で、直火式エスプレッソメーカーの素材としては、アルミよりもだいぶ後の登場となりました。

アルミ製
「モカ・エクスプレス」

ステンレス製
「イルサ」
~価格~
原材料の価格や製造工程を反映して、アルミ製の方がステンレス製よりも価格は安く、手の届きやすい存在です。ステンレス製に近い高価なアルミ製メーカーもまれに見られますが、例えば「ムッカ・エクスプレス」がカプチーノを作れるなど、特別な機能を備えたものでない限り、ベーシックなものと本質的には変わりありませんので、デザインなどにコストがかかっている場合が多いようです。
~味~
「伝統的なアルミ製のほうがおいしい」、「ステンレス製のほうがにおいが少なくて良い」など、アルミ、ステンレスともにそれぞれ優位であるという意見がありますが、材質の違いによる味の差というものは、あまりないと考えて良いでしょう。器具自体のにおいについても、初めそれぞれに特有のものがありますが、使い始めるとコーヒーの香りが器具になじみ、双方ともすぐに気にならなくなります。
母国イタリアでは、古くから使われてきたアルミ製のほうが今でもメジャーですが、ステンレス製も高価ながらそこに共存しているということは、両者の間に決定的な味の差がないということの裏づけと言えるのかもしれません。
~衛生面とお手入れ~
直火式のエスプレッソメーカーは、アルミ製、ステンレス製ともに丸洗いができて便利です。ただ、アルミ製のものについては、使用するうちに器具の内部が黒ずんだり、白いしみが付着するなどして、見た目の清潔感を損なってしまうことがあります。
これらは、水とアルミが酸化反応してできる物質で、使用後の器具に残った水分が原因となり、時間の経過とともに発生します。人体には無害といわれていますが、一度付着すると完全に落とすことは困難ですので、洗浄後は水分を拭き取り、しっかりと乾燥させてから保管することをおすすめします。
イタリアでは、多くの家庭が毎日、あるいは一日に何度もエスプレッソメーカーを使いますが、日本では使用の間隔が空いてしまうことも多く、また、湿度が高いということもあってか、久しぶりに使おうとした時などにこの汚れが気になる、というケースがよくあります。母国イタリアではアルミ製のほうがメジャーと述べましたが、このあたりの事情は、イタリアと日本では少し異なるかもしれません。
~IH調理器について~
IH調理器での使用については、アルミ製、ステンレス製を問わず、基本的にはどの機種も使用することができません。これは、日本のIH調理器が、直径12cm未満の器具を加熱しないよう設計されているからです。
ただ、「アレッシィ」や「ベルマンCX-25」については、直径12cmに満たないものの比較的底が大きいため、多くのIH調理器で利用できているという情報もあります。
なお、IH調理器に「ラジエントヒーター」(赤く光って発熱する調理器)が併設されている場合は、材質を問わずどの機種も、そちらでの利用が可能です。
~まとめ~
ごく大雑把ではありますが、上で述べてきたそれぞれの特徴をまとめると、次のようになります。
|
価格 |
味 |
衛生面とお手入れ |
デザインの特徴 |
アルミ製 |
○ |
○ |
△ |
伝統的 |
ステンレス製 |
△ |
○ |
○ |
モダンで多様 |
伝統的なスタイルと手頃な価格でアルミ製。お手入れの手軽さや衛生面でステンレス製、ということが言えそうです。
なお、上記以外の特徴として、ステンレス製のものには「減量フィルター」がついているものが多く、これがあると、器具容量の半分だけでもエスプレッソを作ることができます(下記「サイズを選ぶ」コーナー参照)。アルミ製にはこの部品がついておらず、使用することができません。
【サイズを選ぶ】
次にサイズ(カップ数)選びです。ここでは、適切なサイズ選びについて考えてみましょう。
~直火式エスプレッソの1カップとは~
直火式エスプレッソメーカーの場合、1カップがおよそ50ccです。これは、普通のコーヒーカップの3分の1程度の量でしかありませんが、エスプレッソはドリップ式のコーヒーと比べ濃厚なため、これが1カップとなります。デミタスカップという、エスプレッソを飲むための小さなカップでは、この量がちょうど1杯分となり、また、カプチーノやカフェラテなど、ミルクを加える飲み方でも、ベースとなるエスプレッソとして適した量となります。
ただ、街のシアトル系カフェでもサイズが選べるように、直火式エスプレッソでも、必ずしも「1人分=50cc」とこだわる必要はありません。お1人で1.5カップ分とか2カップ分を召し上がる方もたくさんいらっしゃいます。
~大は小を兼ねるか!?~
直火式エスプレッソメーカーは、基本的にいつも器具の容量分いっぱいに作るものです。わずかな加減ならできますが、例えば6カップ用の器具で3カップ分だけとか、4カップ分だけ作るということはできません(例外あり。下記参照)。これは、豆の量を減らしてコーヒーバスケット内の密度が下がると、抽出に必要な圧力が得られず、薄いコーヒーができてしまうからです。そのため、サイズ選びで大切なことは、「普段日常的に淹れる容量の器具を選ぶ」ということです。来客時などを想定して大きなサイズを選ぶということは、おすすめできません。
~「減量フィルター」の利点 ~
しかし、「減量フィルター」が付属されている機種(「イルサ」などのステンレス製機種)の場合、器具容量の半分だけでもエスプレッソを作ることができます。下の写真のように、減量フィルターをバスケットの中段に装着することで、コーヒー豆の入るスペースが狭くなり、豆の量を減らしても、必要な圧力を得ることができるのです(このときボイラーに入れる水の量も半分強にします)。
なお、これらの機種においても、容量の半分だけ作る場合は、通常時よりエスプレッソが少し薄めに仕上がる傾向があります。全量を作るときよりも豆を多少きつめに詰めることで、より適正な濃度に近づけることができますが、やはり容量のすべてを作る時の方が、抽出はより安定しています。
▼減量フィルターなし

▼減量フィルター装着(コーヒー豆は装着後に入れます)
~人気が高いサイズは?~
当店のこれまでの販売経験では、3~4カップ用がもっとも人気の高いサイズです。そしてその次に、2カップ用や6カップ用が続きます。
では、3~4人で召し上がっている方がもっとも多いのかというと、必ずしもそうとは限らないようです。実際にお客様のお話を伺うと、お2人で3カップ分、さらには4カップ分を召し上がっている方も多くいらっしゃいます。また、お1人用として2カップ用をお求めになるケースというのも大変多くあります。
~まとめ~
上で述べたように、サイズ選びのポイントは、「普段日常的に飲む量の器具を選ぶ」ということです。特に、「減量フィルター」の付属されていない機種(アルミ製機種)については、容量の一部だけを作ることができませんのでご注意ください。
そして、減量フィルターが付属されている機種(「イルサ」などのステンレス製機種。)については、器具容量の半分だけでもエスプレッソを淹れることができるため、飲む人数にある程度合わせて作ることができます。ただ、これらの機種においても、やはり容量いっぱいに作る時の方が、抽出はより安定していますので、普段から半分だけ作ることを前提に大きなサイズを選ぶということは、あまりおすすめできません。あくまでも普段は全量を淹れ、飲む人数が少ないときだけ半分の量を作るという方が、器具の良さを最大限に活かせると当店では考えています。
【機種を選ぶ】
最後に機種選びです。材質の厚みやデザインなどにより、同じ素材でも価格はさまざまですが、基本的に、使用方法や出来上がりの味に大きな違いはありません。また、少なくとも当店で取り扱う機種については、価格によって耐久性に問題があるということもありません。あとは、使用する環境やご自身のイメージに合うものを選ぶ、ということで良いかと思います。
直火式エスプレッソメーカーは、丈夫で長く使えるものです。5年先、10年先にも使っていたい機種という観点で選ばれるのも良いかもしれません。どのエスプレッソメーカーも、長年使うとボイラーの表面などが少し焼けたような色になってきますが、それはそれでとても味があり、何年も使いこまれたエスプレッソメーカーというのも、本当に美しいものです。
余談ですが、当店では10年以上も前にお求めになられたお客様から、パッキンのご注文をいただくことがあります。そのようなとき、長く使っていただいていることに深く感謝すると同時に、長年使われて貫禄の出た器具を想像し、販売店として心からうれしい気持ちになります。